
骨粗鬆症
骨粗鬆症
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨がもろくなって骨折しやすくなった状態のことです。60代では2人に1人、70代では3人に2人が骨粗鬆症になると言われています。たかが骨と侮ることなかれ。重症化すると何もしていなくても骨折してしまう『いつのまにか骨折』や、一度骨折すると次から次へと骨折を繰り返す『ドミノ骨折』という負の連鎖を生んでしまい寝たきりになってしまうこともある恐ろしい病気です。
「健康寿命」を伸ばすうえで骨粗鬆症の重要性が叫ばれていますが、一般社会の認知度が低いだけでなく医療現場においても十分な対処が行われていない現状があります。
遺伝的素因もありますが、カルシウム不足、喫煙や飲酒、閉経に伴う女性ホルモンの減少など様々な原因によって引き起こされる生活習慣病のひとつと考えられ、予防や早期診断および長期にわたる治療が必要となる非常に重要な疾患です。
骨は20歳~30歳頃に最も強くなります。特に女性では閉経前後の50歳頃から女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に低下するため、骨量の減少をきたしやすくなります。エストロゲンは、古くなった骨を壊す役割をする破骨細胞と新しい骨を作る骨芽細胞の両方に作用します。閉経に伴いエストロゲンが欠乏することで破骨細胞によって骨がどんどん壊されていき、新しい骨を作るのが間に合わなくなることで骨が徐々に弱くなると考えられています。
骨粗鬆症は、骨密度検査、血液検査、レントゲン検査を用いて診断します。
骨密度は骨の強さを判定するための検査です。骨密度検査では骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度あるのかを測定します。
※手や足で計測する骨密度検査では、治療効果をしっかり判定していくには精度が不足しているといわれており、腰椎および大腿骨で測定するDEXA法が推奨されています。当科では最新のDEXA機器を導入しています。
一般的な腎臓や肝臓機能などの検査のほかに、骨の動態を把握するための骨代謝マーカーやホルモン値や、カルシウム、ビタミンDの不足がないかなどを調べます。
血液・尿検査は、治療方針や薬の選択、治療効果の判定などに非常に有用であり定期的に行う必要があります。
せぼね(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、骨粗鬆化(骨がスカスカな状態になること)の有無を確認します。
骨粗鬆症の治療には、食事療法、運動療法、薬物療法の3つがあります。
骨密度を増加させるためには骨の主成分であるカルシウム、カルシウムの吸収を促進するビタミンD、骨へのカルシウムの取り込みに必要なビタミンK、タンパク質などを十分に摂取することが重要です。最近では、ビタミンB6、B12、ビタミンC、葉酸の摂取の重要性も示されており、バランスのよい食料摂取が必要となります。
一日の目安となる摂取量は、カルシウムが700~800mg、ビタミンDが400~800IU、ビタミンKは250~300㎍とされていますが、日本人の多くは、摂取不足に陥っているといわれています。
アルコールやカフェインは、カルシウムの吸収が悪くなったり、尿としてカルシウムが排出されてしまうため、適度に控えるように心がけましょう。
カルシウム
牛乳・乳製品は、カルシウムの含有量が豊富なだけでなく、吸収率もすぐれています。適量の牛乳・乳製品を積極的に摂りましょう。カルシウム摂取量を増やす工夫として、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻、豆腐などの大豆製品なども取り入れると良いでしょう。
ビタミンD
ビタミンDは骨量を保つうえで重要な栄養素で、食事と日光(紫外線)から体内に供給します。魚類やきくらげなどの食品を意識して摂りましょう。ビタミンDは日光が皮膚に当たることで活性化します。手や足に1日30分から1時間程度、日光を浴びるだけでも効果が期待できます。
ビタミンK
ビタミンKは納豆や海藻類などに含まれています。これらの食品を毎日の食事にバランスよく取り入れましょう。
運動不足は骨密度を低下させる要因の一つです。適度な運動によって骨に負荷がかかることは、骨の強度を保つのに大切です。日常のなかに散歩や階段昇降などの運動を習慣として取り入れましょう。転倒することで、背骨や大腿骨などの骨折のリスクが高くなるため、普段から筋力を保っておくためにも適度な運動が不可欠です。
また、カルシウムが骨に吸収されるためには、紫外線にあたることが必要になります。
1日10~20分程度でも外で散歩することをおすすめします。
骨粗鬆症のお薬は、骨を破壊する破骨細胞と、骨を作る骨芽細胞に作用するものを使用し、大きく3つに分類されます。
年齢や生活様式、これまでの経過などをふまえたうえで、骨密度検査や血液・尿検査などのデータを客観的にみながら、適切な治療薬を選択していきます。
骨吸収を抑制する薬
骨形成を促進する薬
その他
骨粗鬆症治療の最大の目標は、骨折を予防することです。閉経後の女性が一度骨折すると、1年以内に再度骨折をおこす確率は通常の5倍以上と言われています。
骨粗鬆症を初期段階からしっかりと発見し、適切に治療介入することは、将来的に自立した生活を維持することに着実につながっていきますので、まずは気軽にご相談ください。
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